ウェディング・チャイム

「……ニチアサのヒーロータイムが終わってすぐ友達の家に遊びに行くんだな……さすがにその時間は迷惑だろ」

「それがまだあるんですよ。勝手に家の冷蔵庫を開けたり、お昼ご飯の時間になっても帰らなくて、結局健太君のお母さんがその子の分まで食事を出すことになっちゃったことが何回かあるそうです」

「誰だ、そんな非常識な奴は!」

 ……言いたくないけれど、あなたのクラスも関わっているのです、甲賀先生。


「実は、六年一組の高木竜太郎君だそうです」

「はあああ!? 竜太郎が? ……ああ、でもなんとなく解る気がする。あいつの家、日中誰もいなくて、土日も飯代だけ置かれてる状況らしいんだ。でも、他人様の家の冷蔵庫開けたり、昼飯あてにするなんてとんでもない! その点はこっちで指導するからって伝えてくれるか?」

「わかりました。ちなみに、どうやって指導されるんですか?」

「また遊びにおいでって言ってもらえるような遊び方をしなさいって言うさ。迎える方も行く方も、お互いに楽しかったって思えるような、節度ある態度ってどんなものなのか、六年生だったら解るはずだ」

「そうですよね。新山さんも『こんなことを学校に相談するのはおかしいかも知れないけれど、竜太郎君の保護者とは面識がないし、電話番号も知らないから』っておっしゃってました」

「そうだよな、隣のクラスだったら、連絡網にも載ってないし。よし、明日竜太郎にはしっかり指導を入れておく。それじゃあ、次!」

 甲賀先生はコーヒーを片手にこちらへ体を向けて話を聞いてくれているんだけれど、いつも聞き役ばかりで疲れないだろうかと、ふと思った。

「あの……甲賀先生、私の話ばかり聞かされて、疲れませんか?」

「別に疲れてないぞ。あ~、でも堅苦しいカッコは苦手なんだ。だから家庭訪問期間中のスーツで正座っていうのがちょっと疲れるくらいかな。俺の事はいいから次!」

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