ウェディング・チャイム
翌日の朝、いつも早目に登校してくる稜君を児童玄関で待ち構えて、そのまま職員室前の廊下へ連れ出す。
「実は稜君に頼みがあるんだけれど……」
昨夜考えた方法を稜君に伝えると、彼は一瞬戸惑った顔をしつつ
「いいですよ。僕が議長に立候補して、話を進めるんでしょう?」
「そうなの。私が進めていくより、自分達で決めた方がいいと思うの」
「わかりました。うまくできるかどうか、自信はないけれど……」
「大丈夫。稜君は人望があるから。お願いね!」
これで条件は整ったので、あとは話し合いがうまくいくようにフォローするだけ。
小学生でも高学年になると、先生の指示通りに動くことより、自分達で考えた方法を実践して成果をあげることを好むようになる。
うちの無気力に見える子ども達にだって、絶対に成功したい、勝ちたい、という気持ちはあるはずだけど、果たしてうまくいくのだろうか。
職員朝会の後、毎日行われる五分程度の学年打ち合わせで甲賀先生と日課を確認。
「……今日は三時間目と五時間目が運動会練習。三時間目は五年生と合同でヨサコイの練習をする。五時間目は六年生単独だから、徒競走の練習をした後、団体種目の全員リレー練習に入る」
「はい。五時間目がリレーですね。……それまでに学級会入れないと」
「お、子ども達に作戦会議させるのか?」
「そのつもりです。このままじゃ、一組と勝負にもなりません……」
「勝ち負けだけで考えると、クラス編成の時、足の速い子は平等に分けてるから、それほど差がないはずだ。あとはどんな作戦で、どうやってバトンパスを素早く行うかっていうのが重要だよな」