ウェディング・チャイム

「ですよね。ここで頑張れば、きっと子ども達の自信にもつながるし、クラスもまとまるはずなんです! クラスの団結のために、絶対に頑張らなくちゃ!」

「それは俺のクラスも同じ。ここは当然勝ちに行く。二組には負けられないね」

 ふふ、と余裕ありげに笑う甲賀先生の顔を見ていたら、私の闘志に火が付いた。

「ううう~っ! 絶対負けないんですからっ!」

「じゃあさ、運動会の次の日曜、もし藤田ちゃんのクラスが勝ったら、俺が飯おごってやるよ」

「え? ホントですか?」

「ホントホント。約束してたからな。ただし……」

 そう言いながら甲賀先生はまたさっきの不敵な笑みを浮かべて、腕組みをした。

「負けたら俺に飯食わせてくれるよな?」

「えっ!? 何でそうなるんですか?」

「当然だろう。給料日前だけどね。まあ、勝てば関係ない訳だし」

 くううっ、給料日まで計算してるとは、本気ですね甲賀先生。望むところよっ!

「ええ、うちのクラスが勝って、給料日前におごってもらいますから。美味しいもの、何がいいかな~」

「勝ってから考えた方がいいぞ。今言ったら自分の首を絞めることになるだろうし。あ、リーズナブルに藤田ちゃんの手料理をご馳走してくれるってのもアリだぞ」

「何でうちのクラスが負けることになってるんですかっ! そりゃあ今は全然ダメだけど、ドラマチックに逆転しちゃうんですから! 予算たっぷり計上しといてくださいね!」

「その言葉、忘れるなよ。あと一週間でどこまで頑張れるか見せてもらうことにするか。ふふふ」

 そう笑いながら、閻魔帳(教務手帳)と国語の教科書を手に、甲賀先生は職員室を出ていった。

 私も鼻息を荒くしつつ、閻魔帳と国語の教科書、それにクラス全員の五十メートル走タイムを記録した用紙を持って、職員室を出た。

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