ウェディング・チャイム

 一組の団結力に敵わないのは、ある意味仕方がない。

 私にはクラスをまとめるだけの力量が不足している上、担任になってから二か月で、子ども達との信頼関係もまだまだ。

 でも、能力的にはうちのクラスだって負けないはず!


 六時間目の予定だった学活を四時間目とチェンジして、急きょ作戦会議。

「これから学級会をはじめます。今日の議題は全員リレーの順番と作戦を考えよう、です」

 学級代表委員の里香ちゃんが、いつものように司会を進める。

「ではここで、議長を選出したいと思います。誰か立候補してくれる人はいませんか?」

 うちのクラスは、今まで立候補が出たことはなく、そのまま里香ちゃんが議長も務めていたけれど……。

 頼むよ、稜君。

「はい」

 一瞬、教室がどよめき、視線が稜君に集中する。

 やや顔を赤くした稜君が、静かに起立して私の顔をちらりと見た。

 周りにバレないように、私は何も言わず、ただにっこりとほほ笑んで事の成り行きを見守ることに。

「では、森川君、よろしくお願いします」

 里香ちゃんが自分の席に戻り、代わりに稜君が議長席に座った。

「えっと……議長は初めてなのでうまくいかないかも知れませんが、よろしくお願いします」

 稜君がお辞儀をすると、自然と拍手が起こった。

 うん、いい雰囲気。

「リレーは走る順番、バトンパス、それにバトンゾーンの使い方がとても大事だと思うので、まずはそこから決め直していきたいと思います」

 予想以上にしっかり進行してくれる稜君の様子に安堵しつつ、教室の様子を見る。
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