ウェディング・チャイム
『プログラム十七番、六年生の団体種目、全員リレーです……』
放送係の子が可愛らしい声で原稿を読み上げ、それを合図に子ども達を誘導して、スタート位置に整列させる。
以前よりさらに闘志むき出しの子ども達と担任が並び、スタートの合図を待つ。
笛の音、ピストルの音がグラウンドに響いた。そして……。
一組も二組も、順調なスタートで次々にバトンが渡されていくけれど、グラウンド四分の一周ほどリードしているのはやっぱり一組。
うちのクラスが必死に練習したように、一組だってみんなで練習しているので、その差はなかなか縮まらない。
バトンパスもバトンゾーンの使い方も、今のところとてもうまくいっているけれど、どうしても先行する一組に追いつけず、もしかしたらこのまま……と思ったところで、後半の走者が追い上げてくれた。
稜君から女子のアンカー・萌香ちゃんへと繋がれる頃には、その差が十メートルほどになった。
あと少し……健太君がバトンゾーンのギリギリ前まで寄って、萌香ちゃんからのバトンを受け取ろうと待ち構えている。
インコースでは一組の最終走者が同じように待つ。
一組のバトンが最終走者に手渡されようとしたその瞬間……。
赤いバトンがころころと土の上を転がるのが、はっきりと見えた。
一組から悲鳴が、二組からはますます強まる応援の声が聞こえてくる。
気を抜かずに全力で走る健太君へ、会場は惜しみない拍手を贈ってくれた。
遅れてゴールした一組にも、ねぎらいのコールと暖かな拍手。
全力で頑張る子ども達に、お客さんはわが子もよその子も関係なく応援してくれる。
勝ち負けを決めない運動会もあるらしいけれど、私はこの形の運動会が好きだと思った。
全てを平等にしようなんていうことは、社会人になってからはあり得ない。
個人の能力差、努力の差、色々なものを克服しながら頑張れる人になって欲しい。
それを教えるのも学校の役割ではないだろうか。
嬉しさ、悔しさを子どものうちに体験することは、絶対に人生の糧となるはずなのだから。