ウェディング・チャイム
日々の業務の他に、評価事務も加わるこの時期は本当に忙しい。
甲賀先生が以前言っていたけれど、これでもパソコンを使って処理できるようになって、作業効率は劇的に向上したとのこと。
うちの学校もほんの三年前までは、○印や数字のスタンプをずれないように押す、昔ながらの通信簿で、所見欄ももちろん手書きだったそうな。
十年以上前に私がもらった通信簿と、ほとんど同じ形式。
出席日数のところで先生が間違えたらしく、砂消しで頑張って修正した跡の残る通信簿が、まだ実家にあるはず。
でも今は、学校のサーバーに入っているエクセルのシートに数字や記号を打ち込むと、綺麗に印刷されて出てくる。
所見欄も、パソコンでそのまま打ち込むことができ、手書きよりずっとスピードアップして、しかも細かく書き込むことだって可能だ。
だけど、間違えた時にはそれを全部プリントアウトし直さなくてはならないので、細かいチェックが必要。
私の場合、まず出来上がったデータを学年主任の甲賀先生にチェックしてもらい、その後教務主任・教頭先生・校長先生が確認して、OKが出たらやっと印刷。
これだけのチェック体制なので、子ども達に渡す一週間以上前にはもう、データを甲賀先生に渡さなくてはならない。
成績の入力も、できるところはどんどんやって、所見欄は色々な本を参考にしつつ書いていく。
何しろ初めての作業なので、入力しているうちにエクセルの計算式が変わってしまったり、授業日数や出席停止・忌引きの扱いなども複雑で、混乱してしまう。
そんな時、甲賀先生に助けを求めると、自分の作業を中断してすぐにこっちへ来てくれる。
面倒なはずなのに、嫌な顔ひとつせず私の後ろからパソコン画面をのぞき込んでは指示を出して、計算式を打ち直して……。
今日も十回以上、甲賀先生のお仕事をストップさせてしまった。
そんな苦労をしながら、そして甲賀先生にもしごかれながら作り上げたデータが、締切前日にやっと出来上がった。