ウェディング・チャイム
プールの開館時間となった。
既に中へ入るのを待ち構えている子ども達が十数人、一般の方も十人ほど待っている。
「お待たせしました。傘はこちらに入れてください。靴は必ず靴箱へしまってくださいね」
私が誘導している間に、甲賀先生はプールへ向かい、監視場所で待機する。
これから三時間は、お互いにしゃべることもできず、ただひたすら監視するだけ。
入館者が全員靴箱を使っていることを確認してから、私も更衣室へ向かう。
甲賀先生と約束してしまったので、今日は競泳用水着を着用。ただし、ずっとプールサイドにいると寒いので、大判バスタオルを羽織りながら、だけれど。
更衣室を出て、シャワーを浴びてからプールサイドへ。
念のため、いつでもプールへ飛び込めるように、準備運動もしておく。
何となく気になって一般用プールを見ていたら、監視台に座っている甲賀先生に向かって話しかけている女性がいた。
小学校のプールではあまり見かけない、ライトブルーのビキニを着たポニーテールの女性。
談笑している二人の会話は、プールではしゃぐ子ども達の声にかき消されて聞こえない。
プールに関する質問にしては、話している時間が長いような気がする。
少し気にしつつ、準備運動が終わった私も、担当場所の監視台に座った。
二人はまだ、話を続けている。にこにこと笑いながら話す彼女は、遠目から見てもわかるほど抜群のスタイル。
こっそり羨望のまなざしを向ける私は、自分の競泳用水着を見てため息をつく。
そんな時、突然甲賀先生が私を指さし、彼女もこちらを見ている。
私が二人を観察していたのがバレてしまったようで、ばつの悪い思いをしつつ、目を逸らした。