ウェディング・チャイム
 
 私が笑いながら言うと、大崎先生も笑ってとんでもない事を言ってのけた。

「藤田先生は押しが弱すぎます。いや、そもそもやる気が見られません!」

「え、ええっ!?」

 教育実習生から見てもやる気なしって、私、そんなにダメ教員だった!?

「一昔前の少女漫画のキャラクターのようでしたよ」

 ど、どんな女に見られてたの、私!?

 思わず生唾を飲み込みつつ、次の言葉を待つ。

「藤田先生、素直になりましょうよ。今、おいくつですか?」

「に、二十四ですけれど……」

「言いにくいですが、もう今日で最後なので言わせてください。十四歳と同じレベルですよ! 何のための携帯ですか? 今時携帯も持たせてもらえない中学生同士の恋愛でもあるまいし、邪魔な実習生に遠慮してたら本気で取られますよ」

「……」
 

 いつの間にか、漫画家になる話から、私の話へ移っていたらしい。

「態度をはっきりさせないまま、押しの強い生意気な女にやきもきしていましたよね」

 何で解るの!?

「それでも行動を起こさないままうじうじ悩んで、好きな相手ともぎくしゃくしちゃってこのままでは自爆……っていう、少女漫画の典型的な悲劇のヒロインじゃないですか」

 ……今、好きな相手って言ったよね。

 やっぱり、彼女は確信犯だったんだ。

 私がどれだけごまかしても、全てお見通しだったっていうことなのだろう。

 恐るべし、漫画家(の卵)の洞察力!!

 私が何も言えずに呆然としていると、大きくため息をつかれた。

「ホント、私から見たらわかりやすいキャラなんですけれどね、藤田先生は。ただ、スルースキルが高いから、本当に興味がないように思われちゃうんです」

「どういう事?」
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