ウェディング・チャイム
「プールで初めてお会いした時から私のことをずっと気にしつつ、表に出さないようにお仕事されていましたよね。私があんな失礼な態度を取っても、手抜きのない指導案を作って下さって」
「実習生を受け入れるのですから、当たり前ですよ……」
「さらに甲賀先生のこともかなりスルーしていましたね。あんなに無関心を装っていたら、普通の男の人なら『脈なし』だと思って離れていきますよ」
だってそれは、大崎先生と一緒のところを見たくなかったのと、余計な詮索を避けるためだった訳で。
決して甲賀先生をスルーしていた訳じゃないんだけど。
「今は忙しくて話し合う時間がないだけで、別に無視はしていないですよ」
「甲賀先生もそう思ってくれていたら問題ないですけれど、違うみたいですよ」
違うみたい?
……それを聞いて、思い当たるふしがあり過ぎる私も問題だとは思うけれど。
「藤田先生はすごく人目を気にするタイプですね。私や他の先生方に気づかれないように、必死に隠しているのは理解できるんですけれど、甲賀先生にも同じ対応をしたら、うまくいかないに決まってます」
「だ、だって甲賀先生とは別にそんな……」
「そんなどうでもいい相手だったんですか?」
ぎろりと睨まれた。うわぁ、私の一番苦手とする女同士の修羅場がここで開幕、だろうか。
「どうなんですか? 藤田先生がそんな風に曖昧なままで受け流すのであれば、やっぱり私は甲賀先生を諦めませんよ?」