恋したメアリ
怒りにまかせて俺は屋上のフェンスを蹴り上げた。

メアリのことはいっそ無視しよう。

さっさと屋上の出入り口に向かうと、メアリもついてきた。


「双子は……惜しいな」


メアリはくつくつと面白そうに笑い、それからすっと真顔になった。


「うちにくるのは駄目だよ」


「おまえの許可なんかいらない」


「父親を刺激してほしくない」


俺はギッとメアリを睨んだ。


「やっぱり浅川に何かあったのか!」


メアリは首を横に振った。

それは否定にも見え、話すのも馬鹿らしいという呆れ顔にも見えた。

俺の憤りを意にも介せず、メアリは俺を追い越し階段を降りて行く。


「とにかく、来ちゃ駄目だよ」


言い残し、メアリは階下の暗闇に消えた。

俺はすぐに追いかけたが、メアリの姿はすでになかった。


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