恋したメアリ
洋館は大きな門と高い塀に囲まれているが、近代的な防犯システムは導入されていなさそうだった。

植え込みが茂っている一角なら、多少時間がかかっても目立たずに塀を登れるだろう。

ジャージ姿の俺は、手には軍手、懐中電灯と携帯を懐に忍ばせ、零時を回る頃に潜入を開始した。


運動神経は悪くない。
塀は五分と経たず突破できた。

問題はここからだ。どこから屋内に侵入しようか。
すると、目の前の小窓の鍵が開いているのが見えた。


人気がないことを確認して開けると、中は古い造りの台所が広がっていた。

映画でしか見たことのないレンガの窯や、食堂にありそうなステンレスの調理台が見える。

俺はそこから精一杯手を伸ばし、勝手口の鍵を縦にした。

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