恋したメアリ
そうだ、ずっと好きだった。


肩までの柔らかそうな髪も、華奢な手足も。

同級生はガキっぽいと言うけれど、その大きな栗色の瞳も大好きだった。


何より、俺は浅川の性格が好きだった。


花の水換えや、掃除ロッカーの整理など、人が進んでやらない仕事をひっそりやっているのが彼女だった。

クラスで調子に乗った女子が他の女子から靴を隠されたときだって、浅川ひとりがいつまでも一緒に靴を探していた。


浅川芽有はそういう女子で、
中学三年間一緒のクラスだった俺は、
きっとこの学校で誰より彼女を見ていると思う。



「俺と付き合ってください」


「小諸くん」


浅川の大きな瞳から涙がぽろんとこぼれた。

俺は近づき、おっかなびっくりその頬を撫でる。
指先で触れた涙は温かかった。


それから俺は顔を傾け、
一生分の勇気を振り絞って浅川の唇にキスをした。

< 2 / 33 >

この作品をシェア

pagetop