恋したメアリ
俺は生唾を飲み込んだ。

背筋が寒いのは、頭の中で何かが符合していくからだ。


「驚いたことに、奇形種は凄まじいスピードで胎児の形を成していった。そして、二月ほどで芽有とそっくりで健康な女の子になり、培養液から産まれ出た。

浅川夫妻は本物の芽有を生かしながら、表向きは奇形種の娘を芽有として扱った。
幸福な日々がやってきたかに見えた。

でも、一年と少しで奇形種の我が子の命はついえてしまう。
浅川博士は絶望しながら、眠っている本物の芽有の身体に新しい奇形種があることを発見した」


「それは……」


「奇形種は人になれなかった細胞。それを知りつつ、博士は再び奇形種を摘出し、培養した。
再び奇形種は人型を成した。そこで、本物の芽有と同じ成長をさせ培養液から出す。
博士はもう気づいていた。本物の我が子の身体には無数の成長する奇形種が眠っていると。

それ以来、浅川博士は芽有の身体から頃合のいい奇形種を切り取っては培養した。
二番目の奇形種の娘が三つで死んだときには、彼女の脳をデジタル信号化し、準備してあった三番目の奇形種に植えつけた。

不完全な奇形種の娘がひとり死ぬたびに同じことを繰り返した。妻が死に、共犯者がいなくなってもずっと。

……さあ、システムはわかったかな」

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表紙・目次

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