恋したメアリ
メアリは自嘲の笑みを浮かべた。

俺は全身に戦慄が走る感覚を初めて知った。


「それじゃ、おまえも、浅川も」


「そう、きみの芽有は十一番目の、私は十二番目の奇形種人形。
本体から生まれ、ストックされ、順番に彼女の人生を生きる」


いっそ穏やかにメアリは言った。


急に世界が明るくなった。
地階に降り立ったメアリが電気をつけたのだ。

目に映ったのは個人の地下室とは思えない整備された空間だった。
白い壁、白いリノリウムの床。


病院とも研究施設ともとれる無機質な廊下を進み、ふたつの扉を抜けると廊下の右側一面がガラス張りになっていた。

その手前で立ち止まりメアリが言う。


「そこから覗いて。少し覚悟をしてね」


俺は脚がガクガクしていることに気がついた。

心臓が小さな生き物のようにうち震えている。

一歩が重い。
ガラスに歩み寄る。


「ああ」


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