恋したメアリ
メアリの説明は冷淡に響いた。

しかし、その奥に変えられない事象への諦めと深い絶望が感じられた。

それだけに俺は一層悔しさが湧いてくる。


「じゃあ、浅川の一生はなんだったんだ?あの本体の代役を三年弱勤めて終わり?それじゃあ彼女の生きた証はどこにあるんだ」



俺の脳裏にはずっと見つめてきた浅川芽有の姿がいくつもいくつも浮かんだ。


友達と笑い合っている休み時間、

英語の長文を読んでいる授業中、

髪をかきあげるちょっとした仕草、

俺と目が合ってはにかんだ表情、

告白の瞬間の頬の色、

大粒の涙をこぼした栗色の瞳。


全部、全部、そこにあったのに。


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