恋したメアリ
「小諸くん、きみの芽有の顔を見て」


メアリに言われ、俺は大好きだった少女の顔をもう一度見下ろす。

そして気付いた。


「笑ってる……?」


すでに生を停止した浅川の顔は微笑をたたえていた。


心地よい午睡のように、限りなく平和に、幸福そうに。


気付くと、後ろに控えていたメアリが横に並んでいた。


「幸せだったよ、芽有は。好きな男の子と両想いになったから。私の中にまだその幸せが残ってる」


メアリは浅川の記憶を継いでいると言った。

人格も肉体も違うけれど、メアリは浅川を次に繋ぐ存在なのだ。


「記憶は私に、思い出はきみに」


頬を涙が伝った。



ワタシヲスキデイテクレル?



浅川の声が聞こえた気がした。



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