恋したメアリ
岩を積んだ階段までやってきて、ようやくメアリが手を離し、立ち止まる。


「ここ。すぐに登って」


俺はメアリに指示されるまま階段を登った。


「手ェ上に伸ばしてみて」


言われたとおり手を持ち上げると、左手に木材のあたる感触がした。

それは厚い板で、ぐっと上に押し上げると横にズレ、幾枚かの落ち葉と明るい月光が俺たちに降り注いだ。


「学校近くの雑木林だよ。帰れるね?」


俺はずるずると這い出すと、後に続くメアリに手を差し伸べる。


メアリは板と穴の隙間から顔だけ出し首を振った。


「私は戻る。博士に言い訳しなきゃ」


「大丈夫なのか?」


「大事な娘の分身だからね。そうひどいことにはならない」


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