恋したメアリ
俺はメアリの顔を見つめた。

メアリと浅川は双子のように似ていた。


「なあ、おまえも……いつか」


「いい加減『おまえ』はやめようよ」


メアリが明るく笑ってから答えた。


「うん、私もいつか生命活動を停止する」


「いいのかよ。このままで」


「大丈夫、『いつか』はアテにならない」


メアリが両手を地面につき、プールから上がるように身体を持ち上げた。

そして、そのままの勢いで俺にキスをした。


「それまでよろしく」


いたずらっぽく笑い、メアリは穴に吸い込まれていった。

姿は見えないが
「また、明日」
と聞こえ、辺りは静寂に包まれた。


雑木林に残された俺は、板を元に戻し、上に落ち葉を積んで帰宅した。

ひどく疲れていて、ベッドに入るとあっという間に朝がやってきた。

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