恋したメアリ
「退屈そうだね」
声が聞こえた。
最初、俺は気のせいかと思った。
麗らかな午後の電車内で、
その小さな声はおよそ現実離れして聞こえたからだ。
「いや、参ったよ。随分時間がかかってしまった」
違う。
気のせいなんかじゃない。
どこからの声か、それが自分にかけられたものか確認しようと、俺はあたりを見回した。
するとすぐ隣に、黄色い帽子とピンクのランドセルを背負った女の子が座っていた。
まさか、と考える前に少女が顔を上げた。