恋したメアリ

1別人

「あー、芽有だ」


その朝、クラスメートの声で俺は浅川芽有の登校を知った。

ちらりと教室の後方ドアを見ると、友人に囲まれ、小柄な浅川の姿はよく見えない。

何度か盗み見ようとしたが、あまりじろじろ見て周りに二人の関係を気づかれたくないのでやめた。


ひとまず、登校してきたという事実で俺は安堵していた。

そして何の連絡も無かったことを、かすかに恨んだ。


「ごめん、風邪引いちゃって」


喧騒の狭間に聞こえた浅川の声は以前より低かった。

十日ほど寝込んでいたのだから、そんなものかもしれない。



担任が教室に入ってきた。
浅川を囲んでいた一団がほどけ、めいめいの席に戻る。

そこで俺はようやく浅川の顔を見ることができた。


「え?」


口の中で小さく言葉がはじけた。

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