ヒトノモノ
本編
「お疲れ」
「お疲れさま」
私達は今日も馴染みの居酒屋で乾杯している。
目の前にいるこの男、蓮は恋人でもなんでもないただの同僚。
そして蓮には可愛い彼女がいるともっぱらの噂だ。実際にこの目で見たことはないけれど。
そう。蓮はヒトノモノなのだ。
「ごめん。今日のプレゼンの失敗は私のせいだわ」
「まーそんな日もあるだろ。次はしっかりやってもらうから」
私達が企画部でコンビを組むようになり早や2年。私は蓮のサポートだけど、プレゼンとなれば2人で営業先へと向かう。
たまにミスを犯してしまう私を絶対に頭ごなしに怒鳴るような事はせず諭してくれていつも最後には勇気づけられる。
そんな彼はこれまたイケメンだから社内では結婚したい男のNo.1候補。虎視眈々と蓮のお嫁さんの座を狙うお姉さま方がいるけれど、彼女持ちってことでその願いは叶えられていない。
私もいつしか優しい蓮に心奪われてしまった1人。だが想いを告げるつもりはない。彼からしたら私は仕事仲間以外の何者でもないと思ってるから。一緒に仕事が出来るだけでも私は幸せ者だと思わなきゃ。
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