ヒトノモノ

プルルルと鳴り響く蓮のスマホ。誰かなんて聞かなくても分かる。必ず21:00を過ぎると彼女からの定時連絡が入るのだ。




優しい笑みを浮かべながら話す姿を見ると胸がキリリと傷んだ。だって私にその微笑みは一生向けられないだろうから。




「相変わらず仲がよろしいようで」




「そんなんじゃねーよ」




「帰ってあげたら?」




「そんなことより。お前、まだ男出来ないわけ?」




「大きなお世話よ」




私は手元に残っていたジョッキのビールを飲み干す。こいつにそんなこと言われたくない。




私の本当の気持ちもを打ち明けたら私の気持ちに答えてくれるっていうの?そんなこと無理なくせに。




「だったら、イブの予定空けとけ」




「……は?」




突拍子もない申し出に私の脳みそはフリーズした。そのあとの言葉が出て来ない。




なぜその日?みんなでパーティーするとか?それより彼女はどうするの?色んな考えを巡らせるも答えにたどり着かない。




それなのに目の前にいる蓮は口角を上げ薄く笑いながら私を見つめていた。











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