ヒトノモノ
たどり着いた先は夜景が一望出来る最上階のスイートルーム。彼女と泊まるはずの部屋に私を連れてくるなんて無神経にも程がある。
不機嫌なままの私とは反対に蓮はなぜかご機嫌だ。蓮は私の手を引いたままフカフカのソファーに一緒に座り込んだ。
やけに密着しているのは気のせいだろうか。彼女は空いている向かい側に座った。どう考えても座り位置がおかしいと思う。
「で、葵はなにから聞きたい?」
「なにって…それは」
「蓮。ちゃんと最初から話してあげなきゃダメよ」
そこで彼女が口を挟んだ。蓮は私の両手を包みこんで握ると真剣な表情で話し始めた。
「葵、ちゃんと聞けよ。こいつは俺の妹なんだ。血は繋がってないけどな」
「ここまできて、よくそんな嘘吐けるわね」
「あのなぁ。人がちゃんと話してるんだから信じろよ」
「いいよ蓮。私が話す。この人信じてないみたいだし」
彼女の言葉にカチンときた私は彼女を睨んでみるが、それ以上の強い睨みで返されてしまい仕方なく視線を反らした。