ヒトノモノ
「ベッド行くぞ」
蓮は素早く私を抱えあげるとベッドへと運んだ。仰向けの私に覆い被さる蓮。でも私は抵抗の意味も込めて胸の前で腕を交差させ蓮に触れられる事を拒んだ。
しかしそんなことは蓮にとって赤子の手を捻るようなもので、簡単に腕は解かれ今度は蓮によって手首を抑えられてしまう。私はベッドから動くことさえ出来なくなってしまった。
「俺を煽るために抵抗してるわけ?」
「違う。だって私、蓮から直接何も聞いてない」
「さっき摩耶が言ったのが真実だよ」
「だとしても、蓮の口から聞きたいの」
だって蓮は肝心な自分の気持ちを何一つ言ってない。本当は彼女をどう思っているのか。私を組み敷いている蓮の本当の気持ちは?
だからこのまま、なし崩し的に抱かれるのは嫌だ。