恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「私が全部するから、和泉くんは寝てて。
これ、おでこに貼って、あと、この薬飲んでね。
水とかスポーツドリンクはちゃんと飲めてる? 食欲ないならご飯は仕方ないにしても、水分はこまめにとらないと点滴とかになっちゃうから、会社休みたくないならちゃんと飲んでね」
和泉くんが整理しようとしていた買い物袋を取り上げて、ドラッグストアで買ってきた薬なんかを渡しながら言う。
和泉くんは私に押し付けられるままそれを受け取って……それからふっと笑った。
「なに?」
「いや、心強いと思っただけ」
「……私が勇ましいから?」
「少し前にインフルエンザで寝込んだ事があったけど、その時はひとりだったから。
誰かに看病されるのも悪くない」
「でも……さっきは岩上さんがいるだけで眠れないほど嫌だったんでしょ?」
「大野は別。じゃなきゃこんな風に一緒に暮らさない」
そう微笑んだ後、和泉くんは私に言われた通り冷却シートをおでこに貼って薬を飲んで、寝てると自室に入って行った。
パタンと閉まったドアの音にハっとして、食材やら薬やらを整理してそれぞれしまったけれど……顔が熱を持っていた。