恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「こんなに俺に言われても一言も言い返せないし。
何怖がってんだか知らないけど、自分の意見ひとつ言えないのか」
歯を食いしばって手をぎゅっと握りしめる。
悔しかった。
和泉くんにボロボロに言われた事じゃなくて、和泉くんの言うとおりの自分が。
悔しくて悲しくて苦しくて……嫌だった。
こんな風にしか生きてこれなかったし、過去の事は仕方ない。
だけど……私はいつまでこんななんだろう。
他人の顔色ばかりをうかがって自分を押し殺して笑って。
いつまでこんななの――?
言いたい事もお願いも甘えたい気持ちも、本当はあるのに……。
ずっと抑え込んできたせいで、もう溢れそうになってるのに。
ずっと、このままなの――?
「まぁ別におまえの生き方だし俺はどうでもいいけど。
言いたいことのひとつも言えずにただ我慢して周りに気を使ってこれからも生きていけば……」
「――今日、泊めて!」
勢いよくそう言った私に、和泉くんの瞳が驚きからかわずかに大きくなる。
それから、は?と聞き返されて、慌ててしまう。