恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


何か言い返さないと、もう一生このままかもしれない。
そう思い口を開いたら、泊めてって言葉が意図せず勢いで出てきてしまっただけだったから。

もっとも、それが今一番切実な言いたい事で、願いである事には間違いないのだけど。

「だ、だから、迷惑でなかったら今日泊めて欲しいなって……」
「迷惑に決まってるだろ」
「迷惑でも……泊めて欲しいなって」
「……それ、本気で言ってんのか?」
「だって! 和泉くんが言いたい事のひとつも言えないのかって言うから!
私が今一番困ってる事で、それが一番言いたい事だったから!」

もう半ばやけになって言った私をじっと見た後、和泉くんがため息をつく。
呆れる気持ちも分かるだけに何も言えずに俯くと、和泉くんは私に通り越して、お風呂だとかの隣の部屋に入ってしまった。

呆れられた……。
もうフローリングの床につくんじゃないかってくらいに頭を落としてうなだれる。

漫画だったら、私の上にはしょぼんだとかどんよりだとか、そんな言葉が乗っているに違いない。
どんよりというより、どん底だな。

そんなつまらない事を考えている間も、和泉くんはドアを開けっ放しの部屋で何かゴソゴソとしていて。
もう存在自体を無視されているし、いつまでもここにいても迷惑だと、気持ちを切り替えて顔を上げた時。

後ろから声をかけられた。

< 24 / 221 >

この作品をシェア

pagetop