恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
それに、家族の関係をどこか希薄に思っている自分も知っていたから、冷たいだとかそんな風に思われるのも嫌だった。
それを、再会してすぐなのに、こんな風に胸のうちまで晒してしまったのは、和泉くんの雰囲気のせいかもしれない。
今の和泉くんには昔みたいに愛想はないけど、一緒にいて安心できるのは昔から変わらない。
言葉遣いはちょっと乱暴になったし、ちっとも笑顔を見せてもくれない。
それなのに優しさみたいなモノを感じるのは、昔の和泉くんの残像のせいなのか。
それともそこは今も変わらないのか。
変わってしまった事が多すぎてなかなか見えないけれど、本当の和泉くんは変わっていないのかもしれないと漠然と思う。
包み込んでくれるような優しさは、今も健在に思えた。
「相手の顔色ばかり窺っちゃうのは、そういうのも少し関係あるのかも。
困った顔されたくないって気持ちがどうしても消えなくて」
もちろん、全部が家庭環境のせいだなんて言うつもりはないけど、と付け足すと、和泉くんは呆れたように笑った。
「また自己犠牲発言か」
二度目の笑顔も、やっぱり呆れ気味で。
それでも嬉しくなりながら、少し冷めてしまったコーヒーに口をつけた。