人知れず、夜泣き。


 「・・・あれ、悟くんだよね??」

 百花が悟を見つけ、ワタシの方に寄って来た。

 「・・・うん」

 悟は、ワタシにジュエリーを買ってくれた事は1度もなかった。

 「何しに来たの?? 無神経過ぎない?? 悟くん」

 ただただ動けずにいるワタシの代わりに、百花が怒ってくれている。

 悟は、新しい彼女の為に選びに来たのだろう。

 わざわざワタシがいる店で買うなんて、鬼だ。

 程なく橘くんが眉間に皺を寄せて、ワタシたちの方に戻って来た。

 「女性の販売員が良いんだって」

 橘くんは、悟に接客を断られたらしい。

 「じゃあ、ワタシが行くよ。 1番高いヤツ売りつけてきてやるから」

 今度は鼻息を荒くした百花が悟の元へ。

 ワタシの為に怒っている百花。

 イライラは胎教に良くないのに。
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