人知れず、夜泣き。

 サイズが合っていなくとも、プロポーズの際に指輪が必要なのだろうと、とりあえず在庫を確認すると、丁度8号の指輪はあった。

 ショーケースの下の棚から8号の指輪を取り出し、悟に見せる。

 「こちらになります。 お日にち頂くかたちにはなりますが、指輪にお名前ですとか、お好きな文字を刻むことも出来ますが、如何しますか??」

 断るだろうとは思いつつ、一応悟に確認すると、

 「今日必要なので、結構です。 後から入れる事も出来ますよね??」

 悟はどうしても今日、指輪を見せながらプロポーズしたいらしく、やっぱり断った。

 「もちろんです。 では、箱に詰めてまいります。 お会計、先によろしいでしょうか??」

 「あ、はい。 2回で」

 悟からカードを受け取り、百花に会計をお願いし、その間ワタシはラッピングをする。

 「会計、終わったよ。 ラッピング出来た??」

 腹の虫が収まらない百花は、そっけなくさっさと会計を終わらせ、悟にカードを返してきてしまった。

 「早いよ、百花。 もうちょい時間稼いでよ」

 ワタシ、そんなに早く包装出来ないのに。

 「そんなモン、ぐちゃぐちゃでいいじゃん」

 と言う百花の隣で、

 「リボンの代わりに鼻くそでも付けておけばいいと思う」

 橘くんまでしょうもない事を言い出す。

 オイオイオイオイ。

 ワタシの代わりに怒ってくれるのは嬉しいけど、それはないだろ、お2人さん。
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