人知れず、夜泣き。
急いでラッピングを済ませ、悟の元へ持っていく。
「サイズ、合わない様でしたらお直し致しますので、いつでもお持ち下さいませ」
『絶対合わないだろうけど』と思いながら悟に指輪の入った箱を手渡す。
「大丈夫です。 絶対に合いますから」
悟がワタシの目を見た。
真っ直ぐな視線に、目を逸らす事が出来なかった。
そして、悟が買ったばかりの指輪をワタシの前に置いた。
「桜、戻って来て。 桜のロールキャベツが食べたい。 結婚して下さい」
思いもよらない悟の行動に、ビックリしすぎて一瞬頭が真っ白になった。
「オマエ、ふざけんな!!」
物凄い形相で悟に掴みかかろうとする橘くんの声で、我に返る。
怒り狂う橘くんを、百花と店長が取り押さえた。
そんな状況なのに、ワタシは硬直したままで。
ただ、涙が出た。
だって、目に前にあるのは、ワタシがずっと欲しかったものだったから。