人知れず、夜泣き。

 「・・・・・・え??」

 驚いて木内の方を見ると、木内がまた『へへッ』と苦笑いした。

 「・・・指輪貰って、泣いてたじゃん」

 泣くほど喜んでたじゃん、木内。

 「・・・・・・だって嬉しくなかったんだもん。 あんなに欲しくて仕方なかったものなのに、嬉しくなかったんだもん。 でも、嬉しくなかったくせに『本当に受け取らなくて後悔しないだろうか』って不安になっちゃったんだもん。 この歳だしさ」

 『そりゃ、涙だって出るさ』と、笑う木内。

 イヤイヤイヤイヤ。 何を軽く開き直ってんだよ、木内。

 オレのこの底辺にまで下がったテンションをどうしてくれんだよ。
< 119 / 161 >

この作品をシェア

pagetop