人知れず、夜泣き。



 一言も喋らず淡々とシゴトを進め、あとは数が合わなかった分の原因を探る作業だけになった。

 「橘さん、後はワタシ1人で大丈夫です。 先に上がって下さい」

 どうか、さっさと帰って下さい。

 橘さんを帰るように促す。

 「あ、それさっきやっておきました。 単純なカウントミスでした。 じゃあ、棚卸し終了ですね。 お疲れ様でしたー」

 橘さんが『疲れたー』と言いながら首を回した。

 ・・・気付かなかった。 いつのまにカウントし直してくれたんだろう。

 橘さんは、口は悪いがシゴトは出来る人間だった。

 「木内さん、彼氏さんが迎えに来るんでしたっけ?? でも、こんな時間に駆り出されるとか彼氏さんが不憫なんで一緒にタクシーで帰りましょうよ。 家、どこですか??」

 腕時計を見ながら『もう2:00かよー』と顔を顰める橘さん。

 悟は迎えには来ない。 呼びたくもないし。 でも、橘さんと一緒にタクシーに乗るのも嫌だ。

 タクシーに乗ってしまったら、あっと言う間にアパートに着いてしまう。

 悟は明日もお休みだ。 きっと今日は朝方まで起きている。

 悟と普通に会話出来る自信がない。
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