人知れず、夜泣き。
「ねぇ、木内さん。 ここ、丁度指輪売ってるし、婚約指輪買いに行こっか。 来年、結婚しようよ」
木内の元カレなんかより、オシャレで木内に似合うヤツを買ってやろう。
「来年??」
「別に今すぐでもいいけどさ、木内さんのご両親がビックリするっしょ。 『悟さんじゃなくてオレなの!?』って。 それに、オレもちゃんと木内さんの両親に挨拶したいし、自分の親にも紹介したいしね」
「・・・・・・ありがとね、橘くん」
木内が、オレの両手に顔を挟まれながら泣いた。
初めてオレの前で泣いてくれた。
「・・・・・・でも、指輪は要らない」
しかし、木内は泣きながら指輪を拒絶。
「・・・なんで??」
木内、オレと結婚してくれないの??
なんか、オレまで泣きそうなんですけど。
「来年結婚するなら、来年買って。 新作出てると思うし」
さすが、28歳・大人な女性、木内。 こんな時でも超冷静。
「・・・お、おう」
リアルな木内に半笑いになった。
このロマンチックな空気に、容赦なくリアルをぶっ込むなよ、木内。