人知れず、夜泣き。

 「・・・佐藤さんを守るなんて、オレには無理。 連絡先も知らないから」

 「・・・え??」

 「・・・桜、悟さんの番号、消してない?? 残ってる??」

 「・・・・・・残ってる」

 桜が、申し訳なさそうに答えた。

 「分かってるよ。 意図的に残したわけじゃないって事。 桜、悟さんの事気に留めてる素振りなかったし。 残そうとも消そうとも考えなかったんでしょ??」

 「うん」
 
 桜、即答。

 分かってる。 桜はオレに隠れて元カレと連絡を取り合う様な人間じゃない。
 
 オレは桜を100%信用している。
 
 だから、桜もオレの事信じてほしい。

 「じゃあ、悟さんに『佐藤さんを守って』って連絡して。 オレは、桜を守りたいから」

 「・・・でも」

 遂に桜の瞳から涙が零れ落ちた。

 「オレ、今から卑怯な事言うね。 桜も悟さんの番号消してなかった事だし、オレが佐藤さんと腕組んでたこと、チャラにして。 だって、まじで何の意味もないし、アレ。 佐藤の手、振りほどくのが面倒だっただけだし。 でも、もう2度としないから!! ごめんなさい!! ごめんなさい!! 桜、ごめんなさい!!」

 人生で初めて土下座というものをした。

 だって、最早許してもらえるまで謝り倒すしかないじゃん。
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