人知れず、夜泣き。


 百花と談笑していると、朝礼の時間になった。

 横1列に並ぶ社員の前に、店長と修くん、そして修くんのすぐ隣に噂の美人秘書が立った。

 美人秘書は、顔もスタイルも完璧だった。

 想像以上の美人だった。

 ちょっと前、修くんに美人秘書の事を聞いたら『綺麗で気配りの出来るイイ子』と言っていた。

 美人秘書が時折修くんに送る視線は、明らかに好意を含んでいた。

 ・・・勝ち目がない。 ワタシが彼女に勝っている部分なんて、1つもない。


 「-------最後に、今日から木内さんが復帰します。 木内さん、一言」

 「・・・・・・」

 美人秘書の事が頭の中を駆け巡っていて、店長に話を振られている事に全く気付かなかった。

 「桜!! 一言!!」

 隣に並んでいた百花が、肘でワタシを小突いた。

 「・・・え?? あ・・・。 色々ご迷惑お掛けしました。 今日からまたよろしくお願いします」

 慌てて頭を下げる。

 顔を上げると、修くんが笑いながらワタシを見ていた。

 そんな修くんは、ワタシに『頑張って』と口パクすると、美人秘書と一緒に社長室へ消えて行った。
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