人知れず、夜泣き。

 とりあえず、目は覚めた。

 持ち場に戻ってシゴト再開。

 斜め前では、木内が指輪を見に来たカップルを接客していた。

 今のアイツには辛いだろうなー。

 お客様の方も、目の周りを腫らせた木内に若干引いちゃってるし。

 ・・・代わってやろうかな。

 接客を交代すべく木内に近付くと、

 「・・・すみません。 ワタシの目、気になりますよね。 アレルギーなんです。 移らないので大丈夫です」

 お客様の視線に気付いた木内が、開店前に考えただろう言い訳を笑いながら話していた。

 オレの心配は無用だったらしい。

 「そうですか。 早く治ると良いですね」

 お客様も木内に笑顔を返す。

 「お気遣い有難う御座います。 ワタシの目なんてどうでも良いんですよ。 そんな事より、お客様のお気に召す指輪を探しましょう。 気になるものが御座いましたら、ケースからお出し致しますので遠慮なく申し付けて下さい」

 お客様の優しい一言に、木内が表情を明るくさせた。

 調子付いた木内は、カップルに指輪をご購入頂く事に成功。
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