人知れず、夜泣き。

 「うま!!」

 やばい。 美味い。 

 木内、料理得意なのかな。

 あぁ!! アルミのカップに収まっている、ほうれん草のバター炒めも食いたい。

 木内の弁当を凝視していると、

 「・・・お口に合いそうなものだけ食べてください。 あ、でも箸がない・・・」

 木内はオレに弁当を差し出すと、『洗ってきます』とさっきまで自分が使っていた箸を持って屋上を下りようとした。

 そんな木内の腕を掴んで、箸を奪う。

 「オレ、『間接キッスー』とか言って大騒ぎする様な歳じゃないんで」

 早く食わせろ、ばかやろう。 オレの腹が大合唱だっつーの。

 早速狙ったバター炒めを口に放り込む。

 美味いなー。 ほうれん草も美味いし、横にあった胡麻和えも美味い。

 てゆーか・・・。

 「弁当ちっさ」

 全然足りねぇし。

 「・・・あとはグミしか持ってません」

 木内は、オレの膝の上に乗っていた空の弁当を手に取ると、代わりのグミのパックをオレの膝に乗せた。

 「つーか、ゴメン。 これまで食っちゃったら、木内さんが食べるのなくなっちゃうじゃん」

 「別にいいですよ。 今日はそんなに食欲もなかったし。 橘さんが美味しそうに食べてくれて、嬉しかった」

 木内が、少し悲しそうに笑った。
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