人知れず、夜泣き。


 -----彼氏が原因だろうな。

 木内の弁当食っちゃったし、愚痴の相手くらいしてやろうかな。

 「・・・彼氏と上手くいってないんだ?? ごめん。 朝、野沢さんとの会話、聞こえた」

 「・・・そっか」

 そう言ったきり、俯いて何も話そうとしない木内。

 気まず。

 何か喋れよ、木内ー。 やっぱコイツ、苦手。

 「・・・木内さんは、いつも屋上で休憩してるんですか??」

 とりあえず、話題を変えてみる。

 「・・・イヤ・・・。 ウチの会社って、噂回るの早いじゃないですか。 今日、ワタシ酷い顔で出勤しちゃったし、噂になってると思うんですよ。 休憩室だと聞こえてきちゃうじゃないですか。 『あの歳で捨てられちゃったんだ、可哀想ー』とか。 小声の悪口って、なんであんなに通るんでしょうね」

 『はは』木内が完全なる空笑いをして見せた。

 ひとが折角話題を変えてやったというのに・・・。

 でも、木内の言ったことには共感した。 だって、

 「・・・オレも、休憩室嫌い。 陰で『コネ入社』って散々言われて。 未だに言ってるヤツもいるし。 飽きないのかねー」

 昨日今日居心地悪くなった木内とは、訳が違う。

 「・・・知ってたんですか」

 「そりゃね」

 この会社に、オレの味方はいない。
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