人知れず、夜泣き。
「つーか、だいたいオレはコネ入社じゃねぇっつーの」
居心地が良いから、木内に愚痴りたくなってきた。
最初は木内の愚痴を聞いてやるつもりだったのに・・・。
本末転倒。
「・・・と、言いますと??」
だって、木内は聞いてくれるから。
「社長の息子が弁護士になりたいって言って、会社継げなくなったから、社長に頼まれてこの会社に入ったんだっつーの。 オレは別にやりたい事もなかったから『じゃあ、入ります』ってなっただけだっつーの。 オレから『入れてくれ』って言ったわけじゃねぇのに。 息子だったら『コネ入社』って言われなくて済んだだろうに、オレが従兄弟だったばっかりにこの扱い。 納得出来ねーっつーの!!」
屋上なのを良い事に、大きい声を上げる。
あ、なんかちょっとスッとする。
「みんなの前でもそのキャラ出せばいいのに。 きっとみんな、橘さんの事好きになりますよ。 誰も『コネ入社』って言わなくなりますから」
雄叫ぶオレを見て木内が笑った。
ほらね。
やっぱり、木内はオレが喜ぶ言葉をくれる。
木内には何でも話せる気がする。
つか、聞いて欲しい。
やっと会社で1人、心を開ける人を見つけた。