人知れず、夜泣き。


 買い物を済ませアパートに帰る。

 いつまでも逃げていたって仕方がない。

 ちゃんと話して、しっかり振られよう。

 「ただいま」

 玄関で靴を脱ぎ、部屋に入ると、悟がソファーで寛ぎながらゲームをしていた。

 今日はあのコと会わなかったのだろうか。

 「おかえり」

 悟はゲームに釘付けで、ワタシの顔を見てもくれない。

 ・・・仕方がない。

 悟はもう、ワタシになど興味がない。

 その事実が悲しくて、やっぱり涙が押し寄せる。

 「・・・すぐゴハン作るね」

 涙を見せぬ様、キッチンへ逃げる。

 料理をしながら気持ちを落ち着けよう。

 泣いたってきっと、悟の気持ちは戻ってこない。

 浮気をされたカッコ悪い女。 だけど、最後くらいカッコ良く終わりたい。

 泣くもんか。
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