人知れず、夜泣き。

 「・・・ワンマン社長め」

 不満たっぷりな視線を橘さんに送ると、

 「何とでも」

 橘さんが楽しそうに笑った。

 その笑顔につられて、こちらも笑ってしまう。

 何だかんだ、橘さんといると辛い気持ちが和らぐ。

 「・・・あ、時間だ!!」

 ふと腕時計を見ると、あと5分で休憩が終わる時間だった。

 「先戻るね」

 空のタッパーを小脇に抱え、屋上を出ようとした時、

 「次はえびフライが食べたいでーす」

 橘さんが手を振りながら、次回のお弁当のリクエストをした。

 ・・・また朝から面倒なの作らせようとしやがって。

 でも、橘さんなら喜んで食べてくれるだろう。

 「うん!! 分かった!!」

 何を調子良く返事してんだ、ワタシ。

 「やった♪」

 だって、橘さんがこんなにも嬉しそうにしてくれるから。

 だから、橘さんに食べさせたいと思ったんだ。
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