人知れず、夜泣き。

 「木内さん、弁当を一緒に食べないって話はどこに行ったの??」

 えびフライを頬張りながら、木内の話を元に戻す。

 「噂になってるんだよ。 ワタシがお弁当で橘くんを釣ってるって」

 木内が不服そうに顔を顰めた。

 ・・・くだらん。 くだらなすぎる。

 「言わせておけばいいじゃん」

 「何言ってんの!? ワタシがお弁当釣ってるって事は、橘くんは『男に捨てられた年増の女のお弁当にまんまと釣られた男』って思われてるって事だよ!? 『レベル低い女に捕まったレベルの低い男』って事なんだよ!??」

 木内が、エビフライに至福の時を感じているオレの二の腕を揺すった。

 食い辛い。

 そして木内、自分に自信無さすぎ。 自分下げすぎ。 だから振られるんだ、コイツは。

 「だからって、木内さんの弁当食べれなくなるの嫌なんですけど」

 やっと見つけたオレの楽しみが無くなるとか、絶対に無理。

 「橘くんがお弁当食べてくれるのは嬉しいので、お弁当は作ります。 ただ、一緒には食べない」

 「それじゃあ、ダメ出し出来ないじゃん」

 「しなくていいじゃん。 どうしてもしたいなら、LINEですればいいじゃん」

 木内はどうしても陰口を叩かれるのが嫌らしい。

 でも、それじゃ、だめ。

 だって、木内と喋りたいから。
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