人知れず、夜泣き。
「オレは、木内さんの弁当食いながら木内さんと喋るの、結構楽しいんだけど」
何気なく言った言葉に、木内が少し顔を赤くした気がした。
「・・・ワタシも楽しいですよ。 何だかんだ、失恋の痛みを和らげるのって同性じゃダメなんですよね。 橘くんといる時は、辛い事忘れられるんですよ・・・」
木内が、ちょっと照れた様にモジモジした。
・・・何言っちゃってんの?? 木内。
「・・・何、オレに抱かれた女みたいな事言ってんの?? 『忘れさせてくれてアリガトウ』的な。 ・・・きっしょ。 壮絶に気色悪い」
「はぁ!?? ばかじゃないの!?? どうしたらそんな発想になんの!?? オマエだよ、きっしょいの!! ゲロ出る」
木内が更に顔を赤くしてキレた。 まぁ、オレの言い方が悪かったんだけど。
つか、木内にオマエ呼ばわり。 そしてゲロ。
「・・・あのさ、オレ今お食事中。 木内さん、育ち悪過ぎない??」
仮にも女だろうが。 仮にも。 男に振られたけど、一応、女だろうがよ。 もうちょい、おしとやかな言葉を使えっつーの。
「・・・だから嫌なんだよ、お金持ちのお坊ちゃんは。 無駄に繊細で」
木内が、悪態をつきながらそっぽを向いた。
そーいう問題じゃないだろ、木内。
マナーの問題だろうがよ。
料理が上手くても、地がこれだから振られたんだ、木内は。
・・・まぁ、気取ってなくて好きだけど。