人知れず、夜泣き。



 通常営業を終え、妊婦の百花以外の社員は店に残り、棚卸しに取り掛かる。

 都会の5階建てのデカイ宝飾店。

 店頭に出ているものと在庫を合わせた数を、データーと照らし合わせる。

 1つ1つの単価が高い為、合わないとかなり大変。

 でも、何故か合わない事がやっぱりある。

 合わない分はさておき、次々数を数える社員たち。

 みんな、少しでも早く帰りたいらしい。

 テキパキ動く他の社員とは対照に、むしろ帰りたくないワタシの動きは鈍い。

 そんなワタシの姿が目に余ったのか、

 「オレもラストまでなんで、もう少し早く動いてもらえませんか??」

 イラついた様子の橘さんが、ワタシの方に寄ってきた。

 「あ・・・すみません」

 今のはワタシが完全に悪い。

 でも、このひとなんかヤな感じ。

 ほとんど喋った事ないから分かんないけど、あんまり優しくないタイプの人間だと思う。

 ・・・・このひとと2人でシゴトするの、ヤだな。

 なんなら1人でするのに。

 橘さんも帰ってくれていいのに。
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