人知れず、夜泣き。


 2人で近くのスーパーへ買いだしに。

 夕方とあって、シゴト帰りの奥様や、サラリーマンが結構いて。

 中にはカップルもチラホラ。

 「・・・オレたちってカップルに見えてたりすんのかな??」

 仲睦まじく、ラブラブオーラを放つカップルを横目にポツリと零すと、

 「見えないでしょ。 見えてたら困る」

 木内が速攻で否定した。 なんか傷つく。 てゆーか、腹立つ。

 「オレが彼氏に見えるのが、そんなに恥ずかしいんだ?? 木内さんは」

 「じゃなくて、橘くんが困るでしょうが。 綺麗でもオシャレでもない年増の女が彼女って・・・あ、でも逆に好感度アップするかもね。 『あの人は女を外見で判断しないんだ』って」

 カップルに見えない様にする為か、木内が少しオレと距離を空けて歩き出した。
 
 ・・・だからか。 昼間、しきりに自分のカッコを気にしていたのは。

 てか、コイツ。 振られて自信を喪失しまくったな。

 捨てられて自分を否定されたと思い込んでいる。

 オレからしたら、捨てた方が馬鹿だと思うけどな。

 木内、ケチ臭いとこと卑屈なとことちょいアホなとこ以外、超イヤツなのに。

 オレはそんな木内の彼氏に見られたとしても全然気にならない為、木内に空けられた距離を詰めた。
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