人知れず、夜泣き。

 木内とオレがカップルに見えないなら・・・、

 「じゃあ、姉弟とかに見えたりすんのかな?? オレら」

 全くの他人だから、顔なんか全然似ていないけれども、木内みたいな姉ちゃん、欲しかったかも。

 「それも、勘弁だな。 『悲惨だねー、あのお姉ちゃん。 いいとこ全部弟に吸い取られたんだねー』とか言われるもん。 絶対に言われる」

 木内、今度は否定どころか拒否。

 つか、底なしに卑屈だな、木内。

 失恋と言うのは、こうも人の心を歪ませてしまうものなのか。

 「いいとこって・・・家がわりと裕福だった以外ないじゃん、オレ。 それも親のおかげなだけじゃん」

 木内ほど卑屈ではないけれど、オレだって自分に自信満々なわけではない。

 「何言ってんの?? 顔だって整ってるし、オシャレだし、育ち良いし、何だかんだ優しいし、たまに口悪いけど面白いし。 ・・・ワタシの料理を『美味しい』って言ってくれるし。 いいとこいっぱいだよ。 いいとこだらけだよ」

 木内は多分、自分の料理を褒めてくれるから、オレを『いいやつ』だと言ってくれているのだろう。

 でも、それでも何か、嬉しかった。
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