人知れず、夜泣き。



 「あ、肉発見」
 
 木内とスーパーをブラついていると、肉コーナーを通りすがった。

 『ハンバーグ♪』と言いながら、何も考えずに牛肉のミンチをカゴに入れると、

 「・・・やっぱ橘くんの家は牛肉のハンバーグなんだ。 繋ぎにパン粉とか使わないんだろうね。 ソースもデミ??」

 オレがカゴに入れた肉を、木内が渋い顔で見つめる。

 何?? これ、ハンバーグ用の肉じゃなかったか??

 「作り方とか知らないけど、肉は牛だったと思う。 確かにソースはデミだった」

 「・・・そっか。 ウチは豚と牛のあいびき肉だった。 なんなら豆腐入ってる事もあったし」

 「豆腐!??」

 肉じゃねーじゃん!!

 どうした!?? 木内家!!

 「イヤイヤイヤイヤ。 露骨に驚いてますけど、結構普通ですよ?? 『豆腐ハンバーグ』なるものも世間一般的に知られてますから。 豆腐を使うと、低カロリー低予算になるわけですよ」

 木内が眉を八にの字にして、困り顔の笑みを見せた。

 ・・・豆腐ハンバーグ。 肉にしか興味なかったから、豆腐ハンバーグの存在を知らなかった。
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