人知れず、夜泣き。
「・・・元気そうだね」
やっと口を開いた、木内の元カレ。
元気そうも何も、昨日まで同じ部屋に住んでいただろうが。
木内を傷つけた挙句、自分の今カノにまで気を遣わせている、目の前の今野とやらが腹立たしくて仕方がない。
「・・・今野くんも」
更に、木内の作り笑顔が必死すぎて見てられない。
毎日営業スマイルしてるくせに、今日の笑顔は下手くそすぎる。
「木内さん、時間ないよ。 早く買い物済ませなきゃ」
そんな木内に助け舟を出す。
もちろん、時間になど追われていない。
だって、嫌だった。
あんな男に胸を痛めている木内を見るのが、嫌だった。