人知れず、夜泣き。


 「・・・元気そうだね」

 やっと口を開いた、木内の元カレ。

 元気そうも何も、昨日まで同じ部屋に住んでいただろうが。

 木内を傷つけた挙句、自分の今カノにまで気を遣わせている、目の前の今野とやらが腹立たしくて仕方がない。
 
 「・・・今野くんも」

 更に、木内の作り笑顔が必死すぎて見てられない。

 毎日営業スマイルしてるくせに、今日の笑顔は下手くそすぎる。

 「木内さん、時間ないよ。 早く買い物済ませなきゃ」

 そんな木内に助け舟を出す。

 もちろん、時間になど追われていない。

 だって、嫌だった。

 あんな男に胸を痛めている木内を見るのが、嫌だった。
< 81 / 161 >

この作品をシェア

pagetop