人知れず、夜泣き。



 夕食を腹いっぱい食って、木内と晩酌。

 木内は泣くだろうか。

 オレの前で、泣いてくれるだろうか。

 内はカシオレ、オレはビールで乾杯。

 木内はそんなに酒に強い方ではない様で、5分もしたら顔が真っ赤になっていた。

 木内がほんのり酔ってきたところで、木内の話を聞いてあげるべく、聞き役に回る。

 「木内さん、愚痴っていいよ」

 木内に目を向けると、木内はボーっと持っていたカシオレの缶を見つめ、ゆっくり口を開いた。

 「・・・可愛かったねー。 悟の彼女」

 「・・・うん」

 確かに可愛いコだった。

 でも正直、あんまり良く見てなかった。

 木内の元カレの方が気になったから。

 普通の人だった。

 中肉中背で顔も普通。 オシャレでもダサくもなく。 普通だった。

 ハッキリ言って、オレの方が上だと思った。

 木内は、アイツのどこを好きになったのだろう。
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